日々是美術

~連載【本物の美術】~ 最も斬れる刀、「兼定」。

  • 2020年06月11日

斬れる刀、それは、業物(わざもの)。

世界中に愛好家がいる日本刀(かたな KATANA)。斬れ味は世界最高とも言われています。某番組で、飛んでくる弾丸を日本刀が真っ二つに斬り落とすシーンは衝撃的でした。

その日本刀の中でも最も斬れる刀のことを、業物(わざもの)と呼びます

写真の刀(当店品)は、初代・会津兼定。良業物であります。

この兼定の血筋はまさに刀の歴史でして、2代兼定は業物中の業物である最上大業物で、蒐集家の垂涎の的であり、そして11代兼定は、あの土方歳三が愛用していた刀として有名です。美濃を発祥とするこの兼定の血筋は、斬れる刀の血筋でありながら、“うつくしい”刀ということで、戦国の大大名にも愛され、あの武田信玄、明智光秀といった早々たる大名が所持した刀でもありました。

 

※日本刀の5大産地“五箇伝”

持ち主のことを考えぬいた刀

刀をつくるには、砂鉄を固めた玉鋼と繰り返しの鍛錬が必要になります。土地土地の鉄の違い、刀匠による鍛錬の違いなどで、様々な日本刀がつくられました。日本刀の技術は、西洋の剣のそれとは次元が違います。玉鋼は西洋では一層ですが、日本刀は二層(柔らかい、固い)をつなぎ合わせてつくっている。鍛錬も約1200~1400℃で一定に保った温度の中で多すぎず、少なすぎない、繊細で手のかかる鍛錬を行う。ストレスを与えるのが一番ダメだと言います。環境条件、これはまさに、刀匠と鋼の真剣勝負と言えるでしょう。

では、それで、すべてがよく斬れる刀になるのかと言いますと、決してそうではない。

よく斬れる刀というのは、「刃筋が通る」刀です。

居合の達人曰く、「刀筋が通る。刃の軌道、角度、速度が相まって本当に斬れる。斬れる刀というのは、体になじむ刀」。誰でもその刀を持てば斬れるのではなく、その人間に合う刀だから斬れる。ということ。なじむ刀は、持ち主が斬る時、多少バランスを崩しても、刀がそのバランスを整えてくれるといいます。

刀匠がその持ち主のことを考えて考え抜いて、仕上げる。

そんな刀と持ち主が本当にひとつになれた時、最高に斬れる。

業物の歴史は、そんな刀匠の地と汗と涙の結晶だと思います。

本物の仕事に、感謝!

 

~~~~~あとがき(余談)~~~~~

最近ではゲームの影響で若い女性の日本刀ファン=“刀剣女子”が増えていますね。わたしも日本刀が好きなので美術館の日本刀展覧会に足を運ぶと、若い女性の方がたくさんいらっしゃいます。

「その吸い込まれるような美しさに惹かれている」と聞きます。

日本刀の魅力は数あれど、寸分の狂いもない美しさと波紋の曲線美、また、その危険な雰囲気が相まって、独特の世界観を醸し出している。日本刀は“魅了される”という言葉がぴったりな気がします。

ちなみに、刀剣女子に大人気な刀剣乱舞の兼定さまはこんな感じです。

超、イケメンですね!!相当、強キャラなんだとか。。。

江戸幕府の最後の戦い、五稜郭の戦い。その主役・土方歳三が最後までそのプライドをかけた戦いで手に握っていたのは、会津兼定。

その手にしていたそのものは、子孫の方が運営する土方歳三資料館で保管され、歳三の命日の頃になると一般公開されています。遺品として生家に届いた土方の兼定は、刃がこぼれ、柄糸が擦り切れ、いかに激しく過酷だったかを物語るかのようだったといいます。

日本の歴史を彩る偉人の多くには愛刀にまつわる話があります。もしあなたに興味のある歴史上の偉人がいるならば、その愛刀を調べてみると面白いかもしれません。きっとあなたの知らない偉人の一面が見れることでしょう。

※某誌2020年1月号掲載記事より抜粋