店主ブログ
~自分流に描く~ 片岡球子「富士」 ※店主筆(情報誌連載)

力強い輪郭。自由で豊かな色使い。四季折々の木々や花。画面からは命の躍動感が溢れ出している。日本三大女流画家の一人である片岡球子の作品「富士」。
片岡球子は明治38年札幌生まれ。大正15年女子美術学校卒業。上京後は横浜の学校で小学校教員を務めながら絵を教えました。昭和5年25歳の時に院展に初出品し、「枇杷」が初入選。しかし、その後は落選が続きます。大胆な色使い、輪郭のはっきりした線は受け入れられず、「落選の神様」と呼ばれたほどでした。
長い苦悩の時期を経て、彼女を救ったのは画壇の重鎮小林古径。昭和17年に院展に出品した作品「雄渾」が小林の目にとまり、今後の人生を決意させる言葉をなげかけられました。「あなたの絵はゲテモノだ。でもゲテモノでいいから、自分の主義主張を変えないで自分流にそのまま絵を勉強していきなさい。そのうち薄皮をはぐように表に出る時が必ずくるから信じて続けていきなさい」。信念を貫き、47歳で院展最高賞受賞。大胆な色使いはモダンな雰囲気、輪郭のはっきしりた線は生き生きとした表現として評価されるようになっていきました。
人生勉強。50代にスケッチブック片手に全国を旅。60代には終生のテーマとなる富士に出会います。富士の豊かな表情とエネルギーを描きたい。「富士の前に出ると富士にいつも叱られる。『お前、何書いてんだ。僕の顔うまくかけてないじゃないか』一年中言われる。だから書きたくなるんです」。自分流を貫いた103歳の生涯でした。
わたしはこの絵を見ると自然と元気が湧いてきます。それは、自分流を貫いて描いた人間の覚悟と情熱を感じるからです。また、エネルギーに溢れた自分流の生き方ができるのは支えてくれる人がいるからだということも思い返させてくれます。アートで人生に彩りを。
※情報誌R バックナンバー(2018年8月号)より
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