店主ブログ
vol.5『上村松園・松篁・淳之三代展~日本画の行方~ in松柏美術館』
2021年3月27日(土曜日)神は細部に宿る。
『上村松園・松篁・敦之三大展~日本画の行方~in松柏美術館』に行って参りました☆彡
松柏美術館は、日本で最も有名な女流画家の上村松園、そしてその子である松篁と孫の淳之、三代の作品が堪能できる貴重な美術館であります。
上村松園さんは、日本三大女流画家(上村松園、小倉遊亀、片岡球子)の中でも最も幅広く人気がある画家で、明治から昭和に至る数多(あまた)いる女性画家の最高峰と言えるでしょう。
「神は細部に宿る」とはこの人のためにあるような言葉で、髪の毛の一本一本、生え際はまさに神業です。今回の展覧会に一緒に行った息子は「なんか生きている人のおでこみたい」と言っておりました。ご覧になったことがない方は、一見の価値ありです。
描かれる女性の顔立ちにも注目。あの源氏物語の高貴な世界を“現代風”にしたような気品のある顔立ち、“クールビューティー”。その凛とした顔立ちはたくさんの女性の支持を集めており、代表作の「母子」は東京国立近代美術館の人気投票で日本画部門の第一位になりました。子を思う母の表情、立ち姿に圧倒的な女性支持が集まりました。
松園さんの作品をたくさん拝見して、あらためて感じるのは、“気品”。これまで、鑑定、販売、美術館展覧会でたくさん目に致しましたが、感じられる上品さは唯一無二です。たくさん見れば分かるんですけどね。松園をこよなく愛する当店のお客さまは、「見るたびに居住まいを正す」と仰いました。女性にそう感じさせる、女性の模範となるような画家なんだと感動したことを思い出します。
心に溶け込む。
松篁さんと淳之さんは、松園さんとは雰囲気が全く違う画家です。
人生をかけた画題は“鳥”。
松篁さんも淳之さんもご自宅で何百匹という鳥とともに生活されていた話は有名なんですが、「鳥を飼っている」というよりも「鳥にいてもらっている」というお考えだったです。
このお2人の描かれる鳥の絵を見ると私は、“風景”だなぁといつも感じてしまいます。自然の中に鳥が“同化”している感じです。「居てもらっている」と仰る気持ちで描かれているからなのでしょう。鳥を際立たせているというよりも風景ごと切り取ったような絵。なのでぱっと見ると鳥だけではなく全体に自然と目がいく。その自然で無理なくすっと心に溶け込むような雰囲気がわたしはとても好きです。
日本風景画の巨匠・東山魁夷さんも戦地での臨死体験を通じて以来、「自然が語りかけてくる」と仰いました。松篁さんと淳之さんにも鳥は語りかけてくるのではないでしょうか。やっぱり、“鳥を描こうとして描く画家”には、絶対に描けない絵でしょうね。松篁さん、淳之さんの絵は、一瞬の印象強い魅力ではなく、何度でもいつまでも見ていられる飽きのこない魅力だとわたしは感じています。
美術館でも、鑑定や査定でも、たくさんの絵画を見ていますが、「〇〇の絵だ」と特徴があって皆に愛されている絵を描く画家は、その人生にある種独特の経験があるとわたしは思います。何か心に響く絵画があれば、その画家の人生に触れてみるのも面白いかもしれません。
今回も貴重な体験をさせて頂きました。本当にありがとうございました。
トップクラスの流通価格。
この美術館記事を書いていますと、「結局、値打ちはどれくらいあるのか?」などというご質問が寄せられることがあります。
前提として申し上げておかなければならないのですが、相場というのは複数あるから相場がつくられるものなので、展覧会で展示してあるような一点ものなどに相場はありません。つまりは値付けは難しいということです。なので、有名美術館の展覧会の大半のものは相場がないものが多いとお考え頂いた方が良いでしょう。
ただし、有名巨匠の作品は美術館に展示されているようなものばかりではありません。画廊さんや百貨店、美術店などで販売されている作品もあります。こういうものは流通作品と呼ばれ、流通相場がありますので、値段もあります。有名作家の美術館クラスのものは手に入らないですが、市場に出ている流通作品は実はピンからキリまであります。
明治以降の近現代画家の中で、上村松園さんはトップクラスの人気であり、流通している作品でも値高いものですと、一千万円を下らないものも多数あります。その流通作品のほとんどが日本画トップクラスです。
また、松篁さん、淳之さんも人気。流通作品でも数十万円~数百万円するくらいの作家でいらっしゃいます。絵画の流通市場で星の数ほどある作品の中で、数十万円~数百万円以上する作品(画家)はほんの一握りであります。日本画であればなおのこと。千万単位を超える画家は数えるほどであるといえるでしょう。
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