店主ブログ

vol.18『蒔絵の名品 in 清水三年坂美術館』

清水三年坂美術館。蒔絵の名品。金工細工。藤美堂。
2021年6月26日(土曜日)

世界中の人々を魅了する、幕末明治の“細工品”

『蒔絵の名品 in京都三年坂美術館』に行って参りました☆彡。

清水三年坂美術館。蒔絵の名品。金工細工。藤美堂。

仕事であり、趣味であり、人生である美術の世界。

数多ある美術品・骨董品の中でも、私が最も好きな分野の一つが“幕末明治の細工品(さいくひん)”。

細工品とは、細密な工芸品のことです。金工細工、蒔絵細工、七宝細工などが主だったところですが、幕末明治期の細工品は世界最高峰の工芸品の一つと言えるでしょう。

この分野では日本で最も有名な美術館が、京都清水にある三年坂美術館です。

館長の村田理如さんは、あの村田製作所の創業者のご子息。小さい頃から美しい模様の蝶などの採集がお好きだったようですが、ビジネスマン時代にニューヨークで見た超細密な幕末明治期の細工品に衝撃を受けて蒐集家となったそうです。当美術館には村田氏が約30年にわたって世界から蒐集された名品の数々が見られます。

私、三年坂美術館に来るのは、ゆうに20回は超えていると思います。本当に好きで、いつ見ても新たな“驚き”があるし、帰る時に必ず“得した気分”になるんです。

いつも必ずそう思わせてくれる美術品は、そうはないです。

日本の幕末明治期の細工品は世界中にたくさんのファンがいますが、あのマリーアントワネットもその細工品(蒔絵箱)に魅了された一人で、知る人ぞ知る蒐集家でありました。

世界中の人々を魅了する理由はなんなのか?!

思うままに、お話させて頂きたいと思います。

清水三年坂美術館。蒔絵の名品。金工細工。藤美堂。

失われてしまった、風光明媚な“世界観”

赤塚自得 四季草花蒔絵堤箪笥 – Google 検索

【補足】幕末生まれ。近現代の漆芸界の巨匠。皇室収蔵作品も多数あり、世界中にファンも多い。

四季の花々が彩られた蒔絵の箱。子供から大人まで、日本人でも外国人でも、誰でも、初めて見たら「はっ」と息をのむことでしょう。有無を言わさない圧倒的な魅力。この“飾り箱”が一つあるだけで、どんな部屋でもその部屋の空気を一変する力をもっています。

この作者をはじめ、幕末明治初期の作者たちが作品にしたものには、とても美しい“世界観”がありました。

ある者は多くの咲き乱れる花々を、ある者はおぼろ月夜にたたずむ一匹の白鷺を、ある者は幻想的な景色の中にそびえたつ山々を、ある者は垂れ下がる露笹にひっそりとまる鈴虫を。

平安~室町期以降育った花鳥風月な日本独特の世界観は、幕末明治初期の芸術にしっかりと凝縮されています。そして、その世界観としてはこの時代を超えることはもう二度とできないだろうと私は考えています。

この時代の作者たちには現代の人々以上の“感受性”があったと思うんですが、風景や生き物をよく観察し感じ取ることが自然とできる環境もありました。同時期に近い時を生きた画家には葛飾北斎がいますが、神奈川県沖を見て、今の人にはあの波はまず描けないと思います。北斎は確かに想像力豊かな偉人ですが、当時だからこそ描けた景色だと思います。

明治期以降は産業化の流れで、大半の人々の周りには風光明媚な世界がなくなっていき、生き生きとした色々な生き物も日常的にいなくなってしまった。感じ取る余裕もなくなってしまった。

時代が発展する中で“失われたもの”があったというのは認めざるをえませんが、日本の美しさを凝縮した幕末明治期の作品には今後もますます注目が集まることでしょう。

清水三年坂美術館。蒔絵の名品。金工細工。藤美堂。

今では再現不可能である、精緻な“技術”

正阿弥勝義 群鶏図香炉 – Google 検索

【補足】現代では再現不可能な細工品。幕末明治の金工細工師である正阿弥勝義の作品。正阿弥家は江戸時代に刀装具を代々つくっていた家系。三年坂美術館蔵。

どんなに時代が進化しても、人は人がつくったものに温かみを感じます。

たくさんの“手作り”が魅力的な美術の世界。中でも、幕末明治の細工品の“手作り”レベルは間違いなく最高峰であったと思います。

平安時代以降、江戸幕末まで、日本にはたくさんの武士がいました。そして、その魂である刀(かたな)がたくさんつくられました。

寸分の狂いも許されない刀工技術の世界で、多くの刀鍛冶が「我こそは!」と切磋琢磨し何百年も引き継いできました。

しかし、明治時代になり廃刀令が出され、全国の刀鍛冶は一斉に職を失うことになりました。

そんな中でも、なんとかその刀工技術を生かし、生き残りをかけて商機を見出そうとする者もいました。その者たちは、自らの手で、その最高に精緻な技術力を生かして細工品(金工、蒔絵など)を作り出したわけです。

その超絶技巧とも呼ばれる神業の数々は、約800年の歴史の集大成と言えます。

今では再現不可能なものもあり“失われた技術”となったのは非常に悔やまれますが、その残された作品は、世界に誇るべき日本の“美術力”であると思います。

今回も貴重な展覧会を拝見させて頂きましてありがとうございました。

三年坂美術館さまに、感謝感謝です!

清水三年坂美術館。蒔絵の名品。金工細工。藤美堂。

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