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~連載【本物の美術】~ 大名が渇望した器、「祥瑞(しょんずい)」

  • 2020年06月22日

魅惑のコバルトブルー。

メイン写真は、ブルーが鮮やかな中国明時代末期の「祥瑞(しょんずい)」香炉。

中国の磁器技術が世界最高峰であった明時代(1500年後半)に焼かれた“染付(そめつけ)磁器”の中でも最上手の染付磁器を祥瑞(しょんずい)手と呼びました。とても綺麗なコバルトブルーが最大の特徴で、今ではその色合いを全く同じに再現するのはほぼ不可能と言われています。

 

中国は1300年(元時代)頃、イスラム原産の鮮やかなコバルトを輸入し、磁器に絵付けすることで、世界初の染付磁器(青い色絵付けがしてある磁器)を誕生させました。チンギス・ハン(元初代皇帝)の部下だったマルコ・ポーロは中東産の良質なコバルトを中国に届け、またその中国産の染付磁器をヨーロッパに持ち帰るということをせっせとしていたそうです。

※当時の顔料と同じものは現在では採掘できない

最高の材料×技術

世界を代表する中国の焼物“染付(そめつけ)磁器”。その中でも最も上手、つまり、最高の色材コバルトと最高の土を使った磁器を組み合わせたものを祥瑞(しょんずい)手と呼びます。材料だけではなく、皇帝に献上する御用窯・官窯(かんよう)の最高の職人技術をもってつくられたものとなっています。

官窯品は皇帝に献上するためにつくられたものですから、宮廷以外に出ることはありません。ですから、民間の窯でありながら、時代経過の伝承を通じて、官窯の技術と最高の技術を用いてつくられた祥瑞は稀少性が高く、日本の大名、とくに大名茶人に重宝されました

※「蜜柑祥瑞水指」五島美術館 蔵

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~あとがき(余談)~~~~~

英語でchinaは、“磁器”という意味があるのをご存知でしょうか。世界で初の磁器をつくりだしたのは中国の唐の時代とも言われてます。日本では1600年頃に日本初の磁器・伊万里焼が生まれたわけですから、約1000年近い隔たりがありますね。

中国の代名詞とも言われる磁器。その磁器の技術が磨かれたのは、官窯の存在であることは間違いないです。最高峰の職人が数百から時には数千個のものを廃棄にして選りすぐりの1つを命がけで皇帝に献上する。その積み重ねによって得られた技術は、まさに神業であり、今の時代にその職人技術を求めるのは酷な話かもしれません。

中国美術では、元、宋、明、清の時代のものが、オークションにて数億円以上で落札されるものもたくさんあります。皇帝が存在したころの官窯の技術、世界から集めた材料が結集してできた美術品は、現在では再現できないものばかりです。

この再現性のなさ、、こそ、本物の仕事を語る上で、最近はとても気になっているところです。その時代の材料×技術が、これほど発達した現代より優れているのか????と言われると、美術品の世界においては「今より勝っているものがたくさんある」とわたしは答えると思います。

だから美術の世界は、奥が深くて、楽しいんですよね。

 

 

 

 

 

 

※日本の幕末明治の金工細工師・海野勝珉作「蘭陵王」。明治23年三の丸尚蔵館。

未だに、その稼働する仕組みなど解明されていないところがある。150年前の超絶技巧。

日本も負けてませんね!