店主ブログ
vol.16『生誕130年 堂本印象 in堂本印象美術館』
2021年6月12日(土曜日)“日本のピカソ”と呼ばれた男。
『生誕130年 堂本印象 in堂本印象美術館』に行って参りました☆彡。
今日は、京都北山。ほど近くに金閣寺がある堂本印象美術館。ものすごく目立つアートな外観が素敵です。
画家の名前がついた美術館としては、日本でも指折りの立派さだと思います。
日本のピカソ。
宗教画、風景画、抽象画など、考えうるほとんど全ての画題にチャレンジして“モノ”にした画家。
そんな、いつもエネルギッシュで、多才な画家は、あのパブロ・ピカソを彷彿とさせるということで“日本のピカソ”と呼ばれたこともありました。ピカソを知ることのように、印象を知れば知るほど、絵画の大抵を知ることができると言っても過言ではないです。それほど、多くの才能に溢れた画家です。
その画風はというと、年代によって大きく変化するんですが、初期から中期(中年)、中期以降、晩年と大きく3つに分かれるかと思います。具象画、抽象画、具象画と抽象画の融合という流れになっています(具象画というのは対象を具体的に描く絵のことです)。
また、その“色”使いは特徴的。ちなみに、ピカソも青の時代、バラの時代など色の魅力が特徴的な画家でした。こういうのは天性の才能もあるとは思いますが、印象の場合、若い頃に仕事をしていた織物・着物から得たインスピレーションもあるのではないかと私は想像しています。
「見えているものを描くのではなく、知っているものを描くんだ」とピカソは言ったらしいですが、印象も目の前にある対象だけに限らず想像に溢れた絵を描きました。
時代も国も違う2人ですが、西洋画と日本画の発展に大きく貢献したことは間違いない巨匠たちです。
神は“細部”に宿る。
初期から中期までの中で、最も有名な絵は“木華開耶媛(このはなさくやひめ)”でしょう。今回の展覧会のチケットのとても鮮やかな女性の絵ですね。
私はこれまで何度か見ていますが、ずっとぼーっと見入ってしまう絵です。じっくり見たくなる絵と言った方がいいかもしれません。
1929年制作で昭和初期の時代背景を考えれば、その恐ろしいくらいの華やかさには驚いてしまいます。そして、自然風景、肖像絵を画題として落ち着いた色合いが主流だった当時の日本画に一石を投じるような気迫みたいなものを私は感じます。
もう一つ感じることは、“神は細部に宿る”ということなんです。印象の作品の“凄さ”はその細部にあります。花びら一枚とっても、めしべ、おしべ、など一切手をぬくことなく描かれている。誰よりも書物を読み、現場に赴くことで得た圧倒的な情報量で、自ら描く絵の細部を追求しました。
人気作家なので贋作が多いことでも有名ですが、それは、やはりしっかり見てあげると、その細部に大きく違いが出ているんですよね。だから、以前よりも、初期から中期くらいまでの贋作に出会うことは少なくなりました。贋作を自然と浄化してしまう巨匠。素敵です。
あと、今回、どうしても、もう一作品お話したいのが『夕顔図』。
どうしてもご紹介した過ぎて、掲載させて頂きました。悪しからず。この『夕顔図』は今回展示されています。私の最も好きな印象作品の一つです。
これ墨の濃淡だけで描いた絵なんですけれど、花びらの立体感、質感、艶感までも表現されている。これはもう本当に神業としか言えません。これは行ってぜひ見て欲しいですし、行って見たら、私が言っていることが必ずお分かり頂けると思います。墨の濃淡だけで描かれた花の絵自体珍しいわけですが、カラリストの印象が色を使わなくてもここまで表現できるということを見せつけられた気がします。
間違いなく、一見の価値ありなので、機会があれば、ぜひこれは実際にご覧になってください。
“新しい”日本画への挑戦。
私が堂本印象の作品に初めて出会ったのが、実は、中学生の頃でした。
祖父が堂本印象がとても好きで、床の間によく掛軸をかけていました。美術商の祖父でしたので、自宅でたくさんの好きな掛軸を掛け替えて楽しんでいましたが、中でも堂本印象の掛軸は、とても記憶に残っています。特に、1950年代・60代の頃の晩年前作品が私は好きで、牧歌的な情景画と申しましょうか、私の心に響く大好きな絵画の一つです。
このあたりを境に、晩年へと大きく画風が変化していきます。
西洋絵画・西洋画家との出会いを経て、抽象画へと変化していきます。「これは同一人物の絵か!?」と感じさせるほど、若い頃と年とった頃の画風が全く違うんですね。
“新造形”と名づけた抽象画と具象画を融合させた作品を晩年にたくさんつくりました。ここでは掲載できませんので、ご興味ある方は、一度ご覧になってみてください。
正直申し上げて、私は、この晩年の作品が心に響くかどうかと言われたら、「分からない」としか言えないんですよね。好きでも嫌いでもない。
表現に響くかどうかというものは、もちろん、人それぞれの感性です。
しかし、この晩年の作品群を見ると、いくつになってもチャレンジしたい!という印象のほとばしるエネルギーはびんびん感じることができます。印象は旧来の画壇に批判されながらも、「うまくいくかどうか分からんけど、日本画の未来のためにも、新しい挑戦をやらんでどうするの?!」という気持ちだったと思います。
“新造形”作品の色使いをしっかり見ていくと、抽象表現の中にも、西洋では絶対に使わない日本古来の伝統的な色がしっかり使われているんですよね。今までに敬意を払いながらも、これからに向けて、歳をとってもチャレンジし続ける気概を感じられただけで、私は十分に幸せな気持ちになりました。(※ちなみに、美術品相場の話で言いますと、晩年の作品は非常に評価が高く、世界的にもファンがたくさんいます。特に今の現代アートブームからすると、今までよりもさらに注目を集めるかもしれませんね。)
今回も貴重な体験、本当にありがとうございました。
堂本印象美術館さまに、感謝感謝です。
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