店主ブログ

vol.17『きのくに刀剣ワールド in和歌山県立博物館』

和歌山県立美術館。刀剣。日本刀。藤美堂。
2021年6月18日(金曜日)

名刀、ここにあり。

『きのくに刀剣ワールド in和歌山県立博物館』に行って参りました☆彡。

和歌山県立美術館。刀剣。日本刀。藤美堂。

数年前からゲームをきっかけに、日本刀に興味をもつ女性が増えてブームとなっています。

それまではというもの、日本刀は“切れる、危ない、怖い”という印象があったので、国内市場では衰退傾向にありましたが、女性支持そして外国人からの支持も受けて盛況となっております。

コロナで美術品鑑賞が制限されているものの、アフターコロナの折にはまた日本刀の美術展覧会は多く開催されることでしょう。

今回の展覧会の舞台は“きのくに”。今でいう和歌山県になりますが、その昔、木々が生い茂る国だったので“木の国”と呼ばれていました。それだけ自然豊かで歴史が古いのですが、江戸時代には“紀州(きしゅう)”と呼ばれるようになり、将軍を輩出する名家=徳川御三家(紀州、水戸、尾張)の国となりました。

そんな伝統と格式高い“きのくに”の刀剣展。今回の目玉の一つの刀は、この刀です、南紀重国(なんきしげくに)。

南紀重国。日本刀。
※「南紀重国」和歌山県立美術館“きのくに刀剣ワールド”にて撮影。

初代・南紀重国は、徳川家康に抱えられた名工中の名工で、その後11代続きました。全国的にも評価が高く、一部には海外まで、その愛好家はいらっしゃいます。知る人ぞ知る名刀。

日本刀の見どころの一つはその刃紋(刃の文様)になります。南紀重国は真っ直ぐな刃=直刃(すぐは)を特徴としています。

また、日本刀には“五箇伝”と呼ばれる有名な産地がありまして、中でも最も古い“大和伝”の流れをくむのが、この南紀重国になります。大和伝の特徴の一つは、地鉄(じがね)が柾目(まさめ)になっていること。地鉄とは、刀の素材そのもののことですが、地紋用にはその産地の特徴がでます。そして、柾目とは、木を縦割りしたような、ほぼ等間隔で流れる真っ直ぐな綺麗な模様のことです。

※真っ直ぐな刃紋(直刃)が特徴。

その流れるような真っ直ぐな刃紋と地鉄肌は反り(そり)がない時代の形状と相まって、見る人全てに、とても洗練された美しい印象を与えます

刀工、産地、によって形状、刃紋、地鉄などがまるで違うので日本刀は多種多様であり奥深い。そういう意識をもって展覧会などをご覧になると、「有名な人が持っていた刀」でなくても、色々な楽しみができることと思います。

世界で評価される、鍛冶(かじ)技術。

日本刀は、その本体だけでなく、拵(こしらえ)と言われる“飾り”も見どころの一つです。刀をしまう鞘(さや)、刀を握った手を守る鍔(つば)、そしてその他に意外とたくさんのパーツに分かれております。主には金銀銅で細工されておりまして、それを制作する人を金工鍛冶と呼びます。

その金工鍛冶として、紀州の双璧と呼ばれていた人がいたんですが、それは藪常代と金原直貞という人でした。今回の展覧会は、藪、金原作品も展示してあり、これまでなかなか見れなかったのでとても嬉しかったです。やはり、名工と呼ばれる金工鍛冶の仕事は一味も二味も違います。

この人たちが活躍した時代は幕末・明治期になります。

この時期、たくさんの金工鍛冶がいました。それはなぜかと言うと、刀鍛冶から転身した人が多かったからです。明治に入ると、時代として刀が必要ではなくなったので、まだ装飾としての需要があった刀装具をつくる仕事につきました。

そして、刀装具に限らず、香炉や、置物など“卓上の芸術”を極めていきました。その作品は“超絶技巧”と呼ばれ、世界でも評価されるようになりました。当時も今も、日本美術はあまり世界では人気のないものが多いんですが、この幕末明治の金工鍛冶の作品は、日本の美術品の中で最も世界で通用するものの一つであることは間違いありません。その極小の世界に詰まった美しさには、あのマリーアントワネットも魅了されたほどです。

今回は紀州の名工の作品を堪能させて頂きましたが、本当に楽しかった。私、金工細工は日本の美術品の中で最も好きな分野の一つなので、本当に目がないんです。今回は、名刀だけでなく、金工の名品まで堪能させて頂き本当に幸せな時間でした。

今回も貴重な展覧会、本当にありがとうございました。

和歌山県立博物館さまに、感謝感謝です。

和歌山城にて。藤美堂。

現代でも生きている、刀(かたな)の心。

現代でも日常に使われている言葉。「鎬(しのぎ)を削る」「鍔(つば)迫り合い」「相槌(あいづち)をうつ」「切羽(せっぱ)詰まる」「単刀直入」「反りが合わない」。

鎬も鍔も槌も切羽も、全部、刀剣の言葉です。

「とんちんかん」という言葉。これも関連言葉。刀をつくるというのは、一人の作業ではなく、師匠と弟子が呼吸を合わせてつくる共同作業なんですよね。お餅をつくる時に、打つ人とこねる人がいるように、刀を鍛える時に、師匠と弟子がそれぞれ槌(ハンマー)を交互に打つ。リズムが合えば「とんかん、とんかん」。リズムが狂えば「とんちんかん」。なんか、面白いですよね。

未だに日常的に使われるほど、実は、日本人に根付いている刀(かたな)の心。

それだけ魂を込めて一振りの刀をつくっていたということなんでしょうね。

日本刀や刀装具は世界の人々を今も昔も魅了する数少ない日本美術。

これらの本当の魅力を日本で再認識されるためにも今後も刀剣展覧会が多く開催されることを心より祈っております。

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