美術品・骨董品役立ちコラム

【掛軸】高額品の特徴~誰でも分かる!詳しい解説~

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2024年2月10日(土曜日)

~はじめに~

日本古美術の代表格である【掛軸】。明治期以前は絵や書を飾るための主な手段が掛軸でありました。昭和以降は額縁に飾った絵を見るのが主流となり、生活様式の欧米化により床の間もなくなり、この数十年の間で掛軸の需要は減少の一途です。全体的に掛軸の評価額(相場)は下落傾向ではありますが、中には、未だに、数百万、数千万以上する掛軸も存在します。それはどのような特徴があるのか?詳しく解説したいと思います。

◆目次◆

1.全体相場

2.高額品の特徴(作家物)

3.高額品の特徴(年代物)

4.あとがき

1.全体相場は下落。高額品は珍しい。

私は年間で6000点以上の美術品・骨董品を取り扱い、オークションも含めると年間で1000本以上の掛軸は十分に取り扱っているのですが、そのうち、高額評価がつく掛軸は1割にも満たないのが現実です。

※まとめても評価額が厳しい掛軸もたくさんあるのが現実です

 

市場に掛軸の高額評価品が珍しいという背景としましては、まずは、世の中の掛軸への需要のなさがあげられます。需要減と供給増にて、売買が減少していくと相場は低下していくわけです。以前に比べると生活様式が変化し、床の間がなくなり、掛軸をかけるスペースがなくなってしまいました。また、生活の雰囲気に合わないということもあげられます。掛軸に描かれている内容も、例えば、山水画や花鳥図など、和風や中国風のものが多く描かれているため、現代の洋風建築には合いにくいというのもございます。

どんなものでも、どんな人でも、なんでも、一般大衆に受けないようになれば、どうしても廃れていってしまいます。大金で購入される方はごくごく一部なんですが、その方達も、客人の目にふれるように飾るとか、見せるとか、趣味で粛々とというだけでなく、色々とお披露目の意識もあるわけなんで、そうなると一般の方に受けにくい美術品は避けられがちになります。これは美術品だけに限らず、世の常でしょう。

旧家で立派な床の間がある家だと掛軸がないと逆に様にならないですが、その様子がなくなってきているのも世の流れですね。

床の間 掛軸 藤美堂

しなしながら、掛軸は以前に比べて評価が低くなったとはいえ、まだまだ驚くほどの高額評価品は存在します。

どんな掛軸なのか?といいますと、大きくは2つに分かれます。人気作家の掛軸か、年代物の掛軸かのどちらかです。次から、詳しくご紹介してまいりたいと思います。

2.高額品の特徴(作家物)

作家物でも大きく2つに分かれます。日本物と中国物です。

まず、日本の掛軸ですと、高額評価品のおおよその市場相場は数百万円が多いです。

筆頭にあげられるのが横山大観上村松園ですね。この2人の掛軸作品はオークションでも大人気でして、他の数多いる作家よりも非常に高額評価になる作品が多いです。例えば横山大観ですと、人気の題材である「富士」は値高いものですと、1000万円を超えるものもあります。また上村松園ですと、美人画が人気で、これもまた、1000万円を超えるものがあります。その昔バブルの時代なんかは、1億したときもありましたが・・・・。

横山大観と上村松園のすごいところは、市場に数がまずまずあるにも関わらず、そのほとんどが高額評価だというところですね。それが人気の高さを物語っています。

※Wikipedia「横山大観」

同時代の掛軸作家としては、菱田春草、速水御舟、などがいますが、これは数も圧倒的に少ない作家となっています。稀少価値が高い。

近世掛軸ですと、円山応挙、伊藤若冲、蘇我蕭白があげられます。また、文人画としては池大雅や与謝蕪村、田能村竹田というところ。ここらへんも市場にほとんど数はないです。だから高いですし、贋作も非常に多いので、かなり専門性が必要です。

葛飾北斎も掛軸を製作していますが、浮世絵ほどは高額ではないですね。

さらに近世以前となると、狩野派や土佐派などがあげられますが、一般市場に流通している狩野派、土佐派の掛軸はそれほど評価額が高くないものが多いです。江戸期以降の狩野派は数が多いです。江戸期以前の狩野派掛軸となると評価や判定が難しいですが、高額評価になる可能性はあります。

日本の掛軸の場合、特に明治期以降の作家の場合、十分な評価額をえるためには鑑定書が必要となります。やはり人気作家となると贋作がつきものでして、本物1に対して偽物が99もあるという噂もまことしやかに囁かれるほど。私も、これまで有名作家という掛軸の持ち込みを何本も鑑定しましたが、偽物の方が断然多いのは事実です。それゆえ、今の保証の時代、流通には鑑定書が必要になってきているということですね。

このようなものです。

鑑定書 絵画 鑑定 査定
※鑑定書現物

例えば横山大観も鑑定書があるのとないのとでは評価額に大きな差が出てしまいます。倍以上は違うとおもっていただいて間違いないでしょう。

鑑定機関として権威がある機関;東美評価鑑定機構への申請手続きをすることによって、どなたでも鑑定依頼することが可能です。業者が代行する場合もあります。当店は行います。

あと、作家物の掛軸として存在感があるのは、茶掛です。茶道で主道具となる掛軸です。

これは、茶道具の特徴を踏まえた上でお話した方が理解が早いので、茶道具の解説に詳細は譲るとします。

>>>>>【誰でも分かる解説!】『茶道具』高額品の特徴 リンク>>>>>>>

次に、中国物ですが、、高額評価品のおおよその市場相場は数千万円が多いです。日本のそれより一桁大きいです。

斉白石、呉硝石の作品は非常に高額評価が多いです。昨今の中国掛軸(書画)の高額ぶりはすさまじく、日本の掛軸よりも何倍も評価額が高いです。やはり、書画の本場は中国ですから、市場規模も大きいですからね。中国掛軸は一時期は世界最大のオークションのギネスにもなったことがあるくらいです。

斉白石の色絵で綺麗な掛軸であれば、1億円以上する可能性は十分あります。呉硝石はそこまでではないですが、次に高額です。もう少し時代は若くなりますが、張大千という作家も斉白石と同じかそれ以上の高額評価になる場合もあります。時代は清、明、以前の掛軸となりますと、四王呉惲や楊洲八怪、、など、文人画の董其昌などがいます。これらあげたような一線級の作家ではなくとも、市場評価額で数十万円する作家がゴロゴロいるのは中国美術の底知れぬところです。

今や、日本の掛軸よりも中国の掛軸の方が高額評価の確率は高いといえるでしょう。

※Wikipedia 斉白石

3.高額品の特徴(年代物)

掛軸における年代物といえば、まずは、仏画です。そして、次に古筆

掛軸の保存は非常に難しい。わずか数カ月単位でも保存がおろそかになるとすぐシミができて劣化してしまうのが掛軸。

一番の保存方法は、定期的にことに掛けるなります。掛けじくですからね。掛けてなんぼです。それでこそ本来の姿。

ずっと長い間掛けてある状態を保ってられるのはよほどのことでして、何百年もその環境が整っている場所、それはお寺や神社です。

そう、仏画はお寺や神社の風通しの良いところで長年適度に掛けられてきたので、年代物と呼べる非常に貴重な仕上がりとなったわけです。適度に長年の間掛けられた掛軸の風合いは素晴らしいものです。一番のポイントは、仏さまの表情ですね。美術館や博物館でも、どんなけ小さくてもよく見てもらったらしっかりと確認できるんです、年代物の仏画は。鎌倉時代や、平安時代の1000年以上前の紙や布に書かれた絵なのに。それだけ、環境が整っていれば何百年も保存できるということなんですよね。もちろん大事にされてきたということでもあります。

掛軸の年代物の代表格である仏画。その中でも曼陀羅は非常に高額です。曼陀羅とは仏さまの悟りの境地を描いたもので、仏さまの聖域でもあります。曼陀羅にも種類がたくさんありまして、例えば、室町期以前の両界曼荼羅、春日曼陀羅、当麻曼陀羅などになると状態が悪くても数百万円はくだらないです。

仏教は主には奈良時代から広まり、平安時代には貴族・僧侶中心でしたが、鎌倉時代には一般民衆にまで広がりました。室町期にはすっかり日本に浸透していたわけです。ここらへんは、西洋の宗教画と同様ですね。仏画は信仰の対象として非常にありがたいものであります。

※wikipedia 両界曼荼羅

そして、もう一つ、年代物の代表格といえば古筆です。古筆というと、例えば、平安時代に貴族がしたためた書物の切れ端なんかです。古筆の醍醐味といえば、国風文化の貴族の芸術です。綺麗な紙に、さらさらとひらがなで和歌が詠まれているなんてのは非常に人気があります。それを後世の人が切り取って、掛軸にしたということですね。こんな感じ。

掛軸 古筆
※藤原佐理 古筆

書の発祥は中国ですが、日本独自のかな文化というのは独自性が高く、西洋の愛好家もけっこういます。浮世絵同様、日本を感じる代表的な芸術の一つですね。

古筆でいいますと三筆(空海・嵯峨天皇・橘逸勢)、三蹟(藤原佐理、小野道風、藤原行成)はとても有名です。古筆ば場合は、“伝”というものが多いのですが、“伝”というのは伝えられているという意味です。例えば、“伝”藤原佐理という感じで、それを伝えた人たちの証明書や経歴書などがあったりしますと、数百万円はくだらないでしょう。非常に貴重なものですからね。この分野は美術品の価値でもありますが、歴史的価値の方が高い気もしますね。ただ、歴史的価値は金額では測れないものです。

4.あとがき

全体的に需要が減ってきているものの、一方で、何百万円、何千万円を出してでも求められる掛軸もあるということはしっかりとお伝えできたのではないでしょうか。

市場相場をもとにした高額評価の掛軸は、数百万円、数千万円以上するというお話をしましたが、、、、、

少しばかりでも「夢のあるお話」をしましょう。百万円前後くらいなら、世のご家庭でも可能性はあります。

こと作家物に関しては、世のご家庭にもひっそりと眠っている場合があります。どこでもというわけではないですが、私がこれまで依頼された中でも、豪邸というわけではないご家庭でも実際にありました。

よくあるのは中国掛軸のパターンですが、意外と日本の旧家にひっそりと存在するかもということです。中国も争いの歴史で、特に、文化大革命あたりで、日本に流れてきた掛軸はたくさんあると聞きます。当時、まだまだ経済大国とは呼ばれず、今の相場の何十分、何百分の一以下で売買されていたそうです。

中国掛軸の高額評価は数百万円~数千万円なので、数十万円くらいの評価の作家物になると数がうんと広がります。可能性は広がります。

とくに書道家や茶道家の家系には、鑑定査定で拝見させていただいたことが何回かあります。可能性をお伝えすると必ずといっていいほど家宝にされます。「夢だけでもいいよ」と仰られている方もいましたが。。。。

掛軸と一言で言っても、いろんなものがありますので、無下に捨てたりはせずに、みなさん大切にあつかってくださいね。

藤美堂・店主

(補足) 評価〔額〕という言葉について

本解説でいう“評価(額)”とは、美術品・骨董品の市場流通において核となるオークションで売買される(落札)価格を参考にした市場評価額のことをさしています。査定金額や買取金額とは意味が異なりますので、ご注意ください。

※ちなみに、買取金額とは別名“査定金額”といい、市場評価額から各業者が自らの利益を差し引いて算出されるものです。買取金額(査定金額)に大きな違いが出るのは、各業者の利益の乗せ方が大きく違うからです。

 

(補足) 本記事の評価額、具体的な金額など相場観について

この解説でお伝えしている相場や評価額、具体的な金額は、藤美堂店主の主観によるものであります。個人的見解であり、市場全体の相場を代表するものではありません。また、時価でありますので、そこは参考としてご理解ください。

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