店主ブログ
vol.6『中国青花と染付磁器~京都の鹿背山焼 in大和文華館』
2021年4月3日(土曜日)陶磁器史上の画期的な発明 “青花”。
『中国青花と染付磁器~京都の鹿背山焼 in大和文華館』に行って参りました☆彡
大和文華館は、近鉄(近畿日本鉄道)の創立50周年を記念して建てられた和洋中の全ての優品が展示される関西屈指の美術館です。また、建物&庭園がとっても素敵。洗練されたモダン建築と四季折々の花々が色づく庭園は、訪問者をとても心地よくしてくれます。
大和文華館の展覧会は興味深い内容が多く、これまで度々訪問しておりますが、今回は、中国美術の花形である“陶磁器”であります。
中国の歴史であるといえる“陶磁器”。CHINAという言葉には“陶磁器”という言葉の意味があることはご存知でしたでしょうか?陶磁器は陶器と磁器に大別され、“磁器”というのはガラス質の固い焼物のことであり、今では食器などで日常的に浸透しています。ちなみに、陶器は土からできた柔らかい焼物です。
中国の長い歴史の中で、“磁器”は最初は白いだけでそれほど芸術性のない焼物でしたが、時代が経つにつれて、彩り(いろどり)が加わって美術品として進化していきます。
そして、ついに画期的な発明が生まれたんですね。
中国は、元(げん)の時代。日本では鎌倉時代(1185~)の元寇(蒙古襲来)が有名な時代です。シルクロードを往来して中国とイスラム世界は盛んに文化交流をおこなっておりました。その折、コバルトブルー(エジプシャンブルー)と呼ばれた世界で類を見ない鮮やかな染色料であるコバルトが中国にもたらされました。
白く美しい輝きを放つようになっていた中国磁器に鮮やかなコバルトブルーの絵付けが施された時、それは“青花(せいか)”と呼ばれる陶磁器史上に残る画期的な発明となりました。
染料は時代や風土によって変化するため、当時のコバルトの鮮やかさは、なかなか再現できないようです。つまり、唯一無二の美術品です。
私は、これまで何度も見ていますが、見るたびにその美しさに見惚れてしまいます。元・明時代の“青花”には、何度でもまた見たいと思わせる魅力があります。今回は、美術館の展示室を10周くらいしてしまいました(笑)。かれこれ3,4時間くらいはいたと思います。。。つくづく、惚れ惚れしました。
※青花双魚文大皿 中国・明時代初期 大和文華館蔵(https://www.kintetsu-g-hd.co.jp/culture/yamato/exhibition/kaseyamayaki.html)
知る人ぞ知る染付磁器の優品 “鹿背山焼”
青花以前の中国陶磁は青磁、白磁に代表されるような地の色味が単色で全体に出ているようなものが多かったんですが、青花の発明をきっかけに、より多くの色を使って絵付けを施した色絵磁器などもつくられるようになったんですね。
“青花”は、中国皇帝だけでなく、世界中の王侯貴族を魅了し、長い間、世界の陶磁器に大きな影響を与え続けました。
そして、世界中で数えきれないほどの模倣品が作られます。日本では“染付”という呼ばれ方をして広がり、初めての染付磁器は、あの有名な伊万里焼。それが江戸初期の頃なんで、今から約400年ほど前ですね。中国では明末期のこの頃には色絵磁器が登場していましたので、それを模倣することで伊万里焼と九谷焼は江戸時代に大いに進化しました。
そこから時代が遅れること、江戸時代の後期。京都に“鹿背山焼“が登場します。この鹿背山焼は知る人ぞ知るですが、鮮やかな淡い色合いが特徴で都の人々の心をつかみました。
当店に染付磁器の収集家の方がいらっしゃるんですが、この鹿背山焼にもとても魅力を感じていらっしゃいます。その絵付けの精緻さ、そして、その独特の淡い色合いが相まって、独特の魅力となっています。
今回の展覧会では鹿背山焼がたくさん展示されており、一気にこれほどの鹿背山焼の優品を目にしたのは初めてだったので、とても得した気分になりました。その精緻な絵付けの技術には目を見張るものがあり、幕末から明治期にかけて世界を驚かせた日本の精巧美術を垣間見ることができると思いました。
鹿背山焼は現代でも窯が続いていてまして、ティーセットなどはとてもオシャレで人気です。
中国“青花”と“鹿背山焼”の展覧会。今回も貴重な体験をさせて頂きました。
本当にありがとうございました。
吹墨手鹿桜紅葉文鉢 鹿背山焼 江戸時代後期 木津川市教育委員会蔵(出典;https://www.kintetsu-g-hd.co.jp/culture/yamato/exhibition/kaseyamayaki.html)
落札価格“世界新”の常連。
少し前にはなるんですが2005年に、世界的オークション・英国クリスティーズで、元時代の青花「鬼谷子下山図瓶」がなんと38億8000万円で落札されました。世界のオークションでは中国美術の陶磁器は注目の的、憧れの的になっています。日本の陶磁器と比べるとケタが違うというのが正直なところですね。ピカソやゴッホなどに代表される西洋美術の絵画と並んで、世界のオークションの双璧と言えるでしょう。
しかし、西洋画の作家の世界的な人気とは違い、作者は不明ながらその時代につくられた陶磁器が求められるということは、その時代に対する憧れが影響していると思います。中国でも元の時代は人類史上最強の帝国と言われたモンゴル帝国の時代。明の時代も中国では栄華を誇った時代です。最近では、中国の経済発展によって生まれた中国富裕層の方々が、その昔に世界に散ってしまった中国美術の優品を盛んに買戻ししているわけです。まだまだ、これまで以上の落札額を更新していく可能性は高そうです。
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