店主ブログ

vol.7『鑑真和上と戒律のあゆみ in京都国立博物館』

京都国立博物館の鑑真和上と戒律のあゆみ展。藤美堂。
2021年4月10日(土曜日)

現代まで続く“僧侶教育”の基盤をつくった男。

『鑑真和上と戒律のあゆみ in京都国立博物館』に行って参りました☆彡

京都国立博物館の鑑真和上と戒律のあゆみ展。藤美堂。

 

春の京都は秋にも負けず劣らず素敵ですね。なんとも心地よい風が吹いてました!

訪問した4月8日は、なんと“お釈迦さまの誕生日”。今回の展覧会が日本の仏教の祖といえる方のことなので、なんとも縁を感じてしまいました。

さて、皆さま、“鑑真(がんじん/ganjin)”という名前は一度は聞いたことあると思います。奈良時代に来日した僧侶ですが、何度も渡航に失敗して失明しながらも来日し、日本の仏教に貢献したという話は結構知られていると思います。なんとなくスゴイ人というイメージもあるでしょう。

あらためまして、鑑真さん、日本の“僧侶教育の基盤”を作り上げたスゴイ人なんです。

私は、『僧侶(お坊さん)認定システム』をつくった人だと思っています。

ときは奈良時代。仏教伝来から約200年の時が経っており、その間に、僧侶とは名ばかりの“僧侶もどき”がすっかり増えてしまっていました。なぜかというと、僧侶になれば税金が免除されるという特権があったので、貧しい生活を強いられた庶民の中には、厳しい税を逃れるために形だけ僧侶になるという人がたくさん出てきたです。

「これはマズイ・・・・」と感じた聖武天皇(奈良時代)は中国から高僧を来日させて、仏教の立て直しを図りました。それが鑑真さんです。

「今一度、僧侶たる者を見直し、規律を正し、民を救う志をもった者を育成する!」。鑑真さんはそんな風に思っていたでしょう。

その立て直しを図ったときのポイントが“戒律(かいりつ)”。戒律とは、簡単に言うと、あるべき僧侶の姿(釈迦の教え、生活実践目標、行動規範など)をまとめたもので、「それを満たしているものだけが本当の僧侶である」という公認制度を作り上げました。

“戒律”、、、と聞くと、なんだか「厳しそうだな・・・」とか「近寄りがたそうだな・・・」と思われる人も多いかもしれませんが、それは僧侶が会得するべきことであり、民に強いられるものではないんですよね。戒律を会得した僧侶こそが民を救えるという考えです。

戒律を授けるための総本山は東大寺。その分校として全国に国分寺・国分尼寺がつくられました。今でいうところの、資格をとれる専門学校みたいな感じでしょうか。

こうして、日本の僧侶教育の基盤が築かれることとなりました。

その鑑真さんの意思を受け継ぎ、続く平安時代には最澄&空海、鎌倉時代には法然・親鸞が、一般庶民へとしっかりと仏教を広めていくこととなります。そして現代へと脈々と続いていくわけですね。

今回の展覧テーマ「鑑真和上と戒律」は、『僧侶教育の基礎をつくった男とそのルール』とも言えるのではないかと私は思います(個人的見解)。

重文 戒律伝来記 上巻(部分)

奈良・唐招提寺

出典;京都国立博物館https://www.kyohaku.go.jp/jp/special/tenrankai/kairitsu_2021.html

“戒律”を会得する!僧侶たちの血の滲む努力。

さすが国立博物館でして、かなりの展示品数。主には、戒律を記した僧侶たちの手記。書物が多かったです。

修行として、ひたすら書く、書く、書く、書く。そんな魂のこもった経典を拝見しておりますと、その修業は本当に厳しくて大変なものだったんだろうなぁということが伝わってきます。

「戒律を会得した者、血の滲むような修行をした者がだけが僧侶になれる」。そんな“歴史的背景”を知ってから訪問された方が、展示品の奥深さを感じることができると思います。

鑑真さんの教えは、インド・中国の大乗仏教という教えでありまして、戒律を会得した僧侶は“民を救済できる”という教えであります。大乗仏教=大きな船に乗っかるというのは文字通りの意味なんですが、つまりは、優秀な船頭=僧侶がいれば周りの民も救われるという心の広い考えです。真の僧侶こそが周りを救えるわけですから、この展覧会は、民を救うために一生懸命に努力をされた僧侶たちの血と涙の結晶と言えるかもしれません。

奈良時代~鎌倉時代の文書が大半でしたが、それはそれは物凄い達筆!高僧と呼ばれる人達の条件のひとつには字の秀逸さがあります。何百、何千、何万という文字を整然と確実に記している文書。まあ、これだけの文字量を書いているからこそ達筆になるんでしょう。本当、恐れ入りました・・・。

今回の目玉でもある鑑真和上像も拝見することができましたが、とっても精巧にできています。今から1000年以上も前の木彫物ですよ。それにしても、髭の具合なんてまさに神業、生きている人の肌を見ているようです。40年以上ぶりに唐招提寺を出て、今回京都に展示されるということで話題になっていますが、なかなか間近で見られる機会もないので、一見の価値ありです!

この度も、貴重な美術品の数々を拝見させて頂くことができました。本当にありがとうございました。

※鑑真和上像 唐招提寺蔵https://www.toshodaiji.jp/ganjin.html

“億単位”の人気!日本の仏教彫刻。

2008年のことになりますが、800年前に日本で作られた大日如来像が、ニューヨークで開かれたクリスティーズオークションで、大手百貨店の三越により1430万ドル(約14億円)で落札されました。

 150-250万ドル(約1億5000万-2億5000万円)という予想落札額を大幅に上回り、日本の芸術作品としては史上最高額となりました。

 この大日如来像は、鎌倉時代初期の高名な仏師のひとり、運慶が制作したとみられるものですが、日本の仏教彫刻には世界の注目が集まっています。

仏教作品と競売というと少しバチ当たりな感も否めませんが、需要あるところに価格あり。これも列記とした事実であります。

経典も需要があり、時代が古く、そして達筆であること。そんな経典は非常に貴重なものなので、オークションでも大いに需要があるわけです。市場に流通しているものでも、中には数十万円どころか数百万円、1千万円以上するものもあります。

キリスト教の宗教画もそうですが、宗教芸術は信者をはじめ世界的に最も需要の高い芸術の一つと言えるでしょう。ですから、仏教作品は他の芸術品と比べると流行性はなく安定して評価は高いという稀有な存在だと思います。

仏教芸術は彫刻、鋳物、掛軸、塗物など、総合芸術といえるに相応しいものなので、幅広くかつ奥深い魅力があります。

その世界に一度足を踏み込むと本当にはまってしまいますよ。

 

 

contact

contactお気軽に、ご相談ください

  • お電話でのお問い合わせtel

    0721-25-1033

    電話受付時間 / 10:00-17:00(日・祝日除く)

  • メールでのお問い合わせmail

※鑑定・買取ご希望の方は、事前にお電話もしくはお問い合わせフォームよりお知らせ下さい。

https://to-bido.com/contactお問い合わせフォーム

0721-25-1033

〒584-0025
大阪府富田林市若松町西1丁目1886-3